“日本の工業デザイナーは、ほとんどが企業に在籍し、ほぼ匿名です。アクオスやPSPをデザインしたデザイナーの名前を知っている人はほとんどいません。それでも、企業内のデザイナーはユーザーのことを考えて一生懸命デザインしています。また、一般に工業製品は、デザイナーだけの力でできているわけではなく、企画、設計、ソフト開発、製造、販売、アフターフォローなど、それこそ無名の大勢の力によって出来上がっており、この製品は俺がデザインしたんだなどと大声で叫ぶのはおこがましいと考えています。(それは、デザイナーだけでなくほかの部門の方も同じでしょう。) そういう意味では、工業製品は「コンビニに入るとき、後から来る人のためにちょっとだけ扉を長く開けておいてあげるみたいな行為」の連続で出来上がっているといってもいいと思いますし、そのような全体のまとめ役をデザイナーが受け持っている部分もあり、益々匿名性を求められてしまうというところもあります。(まとめ役が「これは俺がデザインしたんだ」なんて言い出すと、周りの反感買いやすいですから。良くあるのが、「○○さんのお陰で製品化できましたね」「いえいえ、皆さんの努力の賜物ですよ」みたいな会話ですよね。) そういう意味で言うと、メーカーの社員というのは、日々、鹿野さんの言う「匿名性の素晴らしさ」を体感しているのだと思います。”